配当と賃金の話が話題です。
公益資本主義で総 そう推奨したのかは知りませんが(本も読んでない)、2021年に成立した岸田政権がこれを参考にしてるとのことで、それでか企業は内部留保を貯め過ぎだとか株主への配当を減らしそれを賃上げにあてるとかなんとかの話もでて、まあだいたい投資家というか株クラは反対となるわけですが・・
その中で自分的にこの問題を整理してみるなんて企画です。
そんな話。
この話の肝はここだと思うんです。
内部留保を貯め過ぎでも、配当を出しすぎでも、企業とか株主からお金を取り上げて従業員に配れとかそうすれば経済は良くなるという発想があると思うわけです。
それは言い換えるなら以下になります。
「企業や株主・投資家が不当に利益をせしめて溜め込んでるせいで給与があがらない経済が良くならない」という発想です。
そしてそこで企業や投資家からお金を取り上げ他に与えるとできる根拠は自分はここ一点だと思うわけです。
不当に利益をせしめてる。
本当にこれ一点であると思うところです。不当でなければ企業も投資家も取り上げられるいわれなどないわけです。あるとするなら稼ぎすぎかもしれないということですがこの視点では配当などを所得税と同様に累進にするは一つの視点ですがそれはまた別の話ですので今回はそこには触れません。
なので、この話題で論点になるべきところは、配当が給与に対して伸びているとか、内部留保が高くなってるだとかも、不当に給与を減らしてるかどうか?に帰結するものと思うところです。
これが不当であるならそれは給与を不当に減らして利益を伸ばしてるだし、配当が伸びるのも不当な結果でしょ?となり、だからそれらを減らしてお給料をあげましょうは正常に戻しましょうってのは説得力も持ちそうですね。
なのでだからまず論点は、不当に給与を抑えて利益をだしてる配当を配ってるか?だと思うんです。
そしてこの不当に利益をせしめてるかに関しては以下が端的に表しているかと思うところです。
付加価値とあるけどまあ端的には利益の中でどれだけ人件費にかけているかですね。
そして労働分配率には統計があります。
抜粋させてもらいました。
大企業は低めかつ下がるところもありますが、まあ総じて労働分配率は下がってるとは言い難いとなりそうです。2000年から2018年まで大きく水準が変わってません。
大企業に関しては2001年とか2008-2009年で労働分配率が上がってます。これは、リーマンショックとかで企業が利益を落としたときです。つまりこれは企業が利益を落としても(ついでに株安しても)、従業員の給与を維持したことを示すデータです。
また大企業の労働分配率が低いのはこれは効率性のせいでしょうね。大きいと効率的にしやすいはありそうです。ただこれを小規模企業並の分配率にあげてしまうと大企業とそれ以外の給与格差が今より加速してそれはそれで大変なことになりそうですが、ひとまずそれは別問題。
そういうわけで、労働分配率は下がってるという事実はないんですよ。
故にこう言えます。
企業が不当に給与を抑え利益をかさ増しした事実はない。
故に、配当を減らし賃金を増やせとか内部留保を削り賃金を増やせとかの主張は正当な根拠に拠っておらず、つまり不当な主張である。
以上で終わりなのですが
これで納得しない方もたくさんいらっしゃるとは思うところでいくつかの事実に対して自分の思うところを補足的に。
最終的には自分が思う真因も挙げたいと思います。
・賃金が伸びないのに内部留保が伸びてるだろう?
そうですね。これはそのとおりだろうと思います。
この記事の表に出ていただきます。
以下ですね。
これは日経平均のデータですが、1989年(ほぼバブル期の頂点)から2009年(ほぼリーマンの底)でBPSは複利で年1%も増してなくこれはリスク商品としても企業経営としてもほぼ増えてないに等しい水準でその役割を全うできてるか怪しいところです。
BPSはほぼ純資産で言い換えれば内部留保とも言えてつまり・・・
バブル崩壊からリーマンまで内部留保が増えてない環境といえます。
そしてこのようなことは資本主義社会としてはかなり異常事態なんです。基本的に株式会社は儲けて利益を一部還元しながら内部留保を蓄積していく仕組みです。
だからこれは投資としても経営としてもその役割を全うしてるとは言い難い状態で、だからこの期間を指して”失われた”と称するのです。
この異常になった理由は・・・仮説とはさせてもらうけど、バブルでやりすぎて不良債権だしたりの構造不況でバブル崩壊からリーマンまでは格別に企業が儲からなかった異常な時期だと思うところです。そしてその異常から脱すれば内部留保は増えて当然なんです。
なぜかというとだから株式会社は内部留保を増やす仕組みだからです。
そもそも企業とはここでいう種子を全部食べず、一部は育てる仕組みだということです。リーマンまでは異常に儲からなかったので種をとっておくことすら出来なかった(故に内部留保が増えない)のができるようになったので内部留保が増える。
その中で異常な時期に基準として内部留保が増える仕組みのものを指して内部留保増えてけしからんとするのはこれまた不当です。
これは上の記事の通り、貯金をする人としない人の差に似てます。
もともと同じ給与30万の人がいて、一方は10万をとっておき貯金をしようとしてますが貯金をしたくても余裕がなくて出来なかった時期があったけど、その後貯金はできるようになって、10万ずつ貯めてそれが1000万になったとき、貯めようともしてなかった方が、お前貯め過ぎだよなあ、だから今後はお前は給与を25万に減らしてこっちを35万に増やせというようなものです。
ここでもその給与30万が不当に給与を削ったとかのものでないのなら、利益を出していって利益の一部をとっておいた内部留保・・財産が増えるのがけしからんとするのは不当なわけです。
・賃金増えない中配当が増えてるぞ?について
これは事実です。配当は増えてますね。
それでですが何個か事実を整理しましょう。
ちょっと古いデータかつ東証一部のものですが・・
抜粋。
2010年の4〜5兆から2019年の11兆前後で倍以上ですね。
自分は銘柄データによる市場集計もしてて2021年末時点は予想配当ですが上場銘柄全体でさらにふえ12.8兆円ほどです。
ここで賃金は増えてないのの株式配当は増えててけしからんという見方はでるのはそうでしょうですが、いくつか指摘させてもらうと・・
まず上場企業全体で目先12.8兆円です。上の一部だけはもう少しありそうですが4.5兆として12年で差額8兆円増えたということになります。だいたい上場企業全部でもそんなに違わないでしょう。
で、2010年から配当が8兆円増えました。
これは上場企業の話で他にも非上場はありますが、この8兆円を日本国民1億二千万でわるのならいかほどかというと・・
67000円ほどです。
仮に全部の配当をリーマンの頃に抑えて増えた分はみな給与ねと上場企業全部にやらせたところで国民一人当たり年間7万円にも届きません。コロナ特別給付にだって届きません。
それで実際に国民の所得がどれだけ低迷してるかと言うなら以下ほどです。
これらをもとに計算すると、一世帯ですが平均世帯人数は2.6ほどとのことなので・・
平成6年(1994年)の平成28年(2016年)所得差額の一人頭は・・・
664.2万-551.6万=112.6万円÷2.6=は・・・
43万円ほどです。
日本人は一人あたり年間43万円ほど所得が減ってしまってます。給付金の4倍以上です。コロナ給付金を毎年4倍もらい続けてやっと釣り合い・・がとれなくてそれでもちょっと少ないくらいです。
上場企業の増配分を全部吐き出させても35万円は足りないです。
民間企業全部なら届くかもしれませんがまあたぶん届かないでしょうね。
というわけで、増えた配当を全部吐き出させても皆が減った所得を埋め合わせるには及ばない。
つまり所得が減った理由は配当増のためではないとこの視点からも言えるわけでそもそも正当に増えた配当なので分ける根拠にも乏しいのですが分けたとしても皆の賃金が十分に増えるわけではないとなりそうです。(非上場企業の配当が上場企業の5倍ほどあればあるいは埋められるかもしれません。もちろんそうする正当な理由はないでしょう。)
で、配当が増える理由ですよね。
推論であるとは断っておきますが・・・
企業が利益をだすなら使いみちは限られています。
・企業に貯める(内部留保になる)
・投資する(経費じゃなければ企業の財産になり・・つまり内部留保になります)
・負債を返す(これも内部留保が増えます)
・株主還元する(これは内部留保がへります)
あと一応ですが賃金を増やすと・・企業利益が減りそれは内部留保の増加を妨げますね。
だから賃金を不当に抑えてないのは労働分配率から言えることで、もう不当じゃなければ得た利益をどう使おうがそれは個人の貯蓄のようなものでもう勝手だと思いますが、企業が利益を出すなら原則上の4つです。
そして上で触れましたがリーマン以降儲かるようになった企業は必要なら投資をし、負債(借金)を返してきました。借金を返すのが落ち着くのならもう利益は投資するか貯めるかしないのであるなら還元するしかありません。
だから配当が増えるわけです。
そのようにして負債を返したからそれ以降の利益は還元に向かうようになってきたではないかと。
投資をしろっていいますが、投資して儲かりますか?
買う人もいないのに工場を建てるのですか?って話です。多くの企業は投資しても儲からないと判断してます。だから借金を返し返しきったら配当を増やす行動を取るわけでその結果の配当増ではないかと推測するところです。
ていうか順調なところは多く負債返済に動いてるし。同時に売れると思えば企業は借りて投資をします。ビジネスチャンスが十分あるとするのに事業を広げない会社って見たことがないです。
あとはあまり溜め込んでROEが下がるのはけしからんって流れはあったりするのでそこも還元強化の理由の一因ではありそうです。
まあでも、負債を返したからと儲かると思える投資先がないからだから還元しかないよねってのが主因には思えます。
配当が増える理由の推論は以上。
まとめると・・
・企業は別に労働分配率を下げてなく不当に賃金を下げてるとかは考えにくい。
・リーマン前まで企業は儲からなく内部留保すらできなかった。利益がでるなら内部留保が増えるのはそもそも当たり前。(だから利益を一部とって再投資する仕組みなので)
・リーマン以降は利益が出るようになって投資や負債返済をすすめていたけど、投資するものもなく負債も返しきったものから還元を強化することで増配が進んでいる。
・そもそも配当の総額はそんなに巨額でもなく、長期に日本国民が減った所得からすれば見合わない小ささ。
以上です。
で、このあとは自分の考える真因だね。
企業は不当に賃金を減らしてない。
家計は所得が減ってあまり消費をふやすことができない。
企業も家計も別に不当に支出を減らしたり溜め込んだりしてない・・とするのなら。
誰かの収入は必ず誰かの支出です。
誰かが収入が足りないのなら誰かが支出を減らしてます。
誰かの収入が不当に減るのなら、誰かが不当に支出を減らしてます。
と、すると不当に支出を減らしてるものは消去法で一つ心当たるのではないでしょうか。
経済主体は3つです。家計、企業・・・そして政府です。
海外もあるけど海外はあまり赤字を押し付けると紛争ネタにもなるのでできれば自分たちで片付けたい問題かなって思いますよ。てか海外なら経常収支は黒字ですね。
つまり政府の支出が足りない。
政府は不当に支出を絞っている。
支出しない政府が上の家計100万円程度の所得減の真因と考えるところです。
だから誰かの収入は必ず誰かの支出であり政府が100万支出を増やすのなら誰かの収入が100万増えるしかないからです。逆に減らすと誰かの収入が減ります。必ず減ります。
政府が支出を100万減らすなら誰かが100万収入が減るのです。
以上です。今回はこれ以上は詰めません。
・・まあでも、だから企業(株主)と国民で争ってる場合じゃなくて、企業も投資家も振っても国民一人10万円もでてくるか怪しくて、振ったり叩くべきものでいうなら支出しない政府なんじゃないかなって思うところです。
以上の以上。
配当と賃金をどう考えますか?
どのような情報をみてどう考えますか?